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サッカー・ビッグクラブの収入ランクに異変! レアルの12連覇を阻んだのはイングランドのあの名門クラブだった!
プレミアリーグ勢の上位台頭の背景にあるものとは・・・
毎年、年が明けて間もなく国際的な監査法人「デロイト」が、「世界のサッカークラブの収入ベスト20」を発表していますが、今回のランキング変動は大きな話題になっています。
今回は、その内容をお伝えします。シーズンは「2015-16」のシーズンということになります。
デロイト社(DELOITTE)は英国ロンドに本拠を置く監査法人ですが、いつも興味深い分析レポートを発表しています。この「デロイト・フットボール・マネーリーグ」の集計もすでに20年目を迎えています。今回、分析していただいたダン・ジョーンズ氏、ティモシー・ブリッジ氏、クリス・ハンソン氏に感謝しつつ、そのポイントを見ていってみましょう。(詳細はデロイト社のサイトを参照ください)
<デロイト社 https://www2.deloitte.com/global/en.html>
まず、解説は後回しにして、上位20クラブの順位を見てみましょう。
レアル・マドリード(スペイン)の12連覇ならず!!
マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)が首位に返り咲く!!
●『サッカークラブの収入上位20(2015-16シーズン)』ランキング
順位 クラブ名 年間収入額 (円換算・
前年比・前年順位)
1位 マンチェスターU(イングランド) 6.89億ユーロ (827億円・
133%・3位)
2位 バルセロナ(スペイン) 6.20億ユーロ (744億円・
111%・2位)
3位 レアル・マドリード(スペイン) 6.20億ユーロ (744億円・
107%・1位)
4位 バイエルンM(ドイツ) 5.92億ユーロ (710億円・
125%・5位)
5位 マンチェスターC(イングランド) 5.25億ユーロ (629億円・
113%・6位)
6位 パリ・サンジェルマン(フランス) 5.21億ユーロ (624億円・
108%・4位)
7位 アーセナル(イングランド) 4.68億ユーロ (562億円・
108%・7位)
8位 チェルシー(イングランド) 4.47億ユーロ (536億円・
106%・8位)
9位 リヴァプール(イングランド) 4.04億ユーロ (485億円・
103%・9位)
10位 ユヴェントス(イタリア) 3.41億ユーロ (409億円・
106%・10位)
11位 B・ドルトムント(ドイツ) 2.84億ユーロ (340億円・
101%・11位)
12位 トッテナム(イングランド) 2.80億ユーロ (335億円・
108%・12位)
13位 アトレティコ・マドリード(スペイン)2.29億ユーロ(274億
円・129%・16位)
14位 シャルケ04(ドイツ) 2.24億ユーロ (269億円・
102%・13位)
15位 ローマ(イタリア) 2.18億ユーロ (262億円・
121%・15位)
16位 ACミラン(イタリア) 2.15億ユーロ (257億円・
107%・14位)
17位 FCゼニト(ロシア) 1.97億ユーロ (235億円・
117%・18位)
18位 ウエストハム・U(イングランド)1.92億ユーロ (230億円・
120%・ランク外)
19位 インテル(イタリア) 1.79億ユーロ (214億円・
109%・20位)
20位 レスター・シティ(イングランド)1.72億ユーロ (206億円・
125%・ランク外)
※円換算額は1ユーロ=120円で換算しています。
いちばんのビッグニュースは、スペイン、レアル・マドリードの12連覇がならなかった、という点でしょう。
なにしろ、この11年間トップを走り続け、ここまで無類の「強さ」を示してきたので、クラブの収入金額という点でもレアル・マドリードのトップは「揺るぎないもの」と見られてきました。
C・ロナウド、セルヒオ・ラモス、ガレス・ベイル、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースと世界各国から集まったスター軍団は、強さ・人気という点でもレアルは間違いなく世界トップクラスです。この2016シーズンでも、勝てば勝つほど大金が転がり込むUEFAチャンピオンズリーグで優勝、リーガエスパニョールでも2位。収入は前年比で7%増を記録しています。それだけにトップの座を譲ったのは「意外な出来事」と言えるかもしれません。
そのレアル・マドリードからトップの座を奪ったのは、イングランドの名門、あのマンチェスター・ユナイテッドです。前年比で33%増加、6.89億ユーロ(日本円換算で827億円)もの総収入を上げ、12年ぶりに首位に返り咲いたのです。
でも、サッカーファンならば、「最近のマンUはちょっと冴えないよね」「プレミアリーグでも。UEFAでも目立っていないし、クラブ内には不協和音が聞こえてるし・・・」「モウリーニョを監督に迎えてからもまだ輝きを取り戻してないね」という声が聞こえてきます。強さやチーム事情だけを単純に反映していないところが、このクラブ収入ランクの面白さと言っていいのかもしれません。
いまや「商業収入」と「放映権収入」がクラブを左右する
巨大スポンサーがずらりと並ぶ「マンU」の強さ
サッカークラブの収入には、大きく分けて
①入場料収入(観客入場料、試合ボーナス、勝利ボーナス等)
②放映権収入(テレビ放映権料、画像配信分配金等)
③商業収入 (スポンサー契約料、グッズ販売売上、興行収入等)
の3種類があることは前回も書きました。
今回の、マンUの躍進の要因は、「商業収入が前年の2億7200万ユーロから3億6300万ユーロにも伸びたこと」にあります。なにしろ、商業収入の増加分だけで、日本円にして約110億円に達しているのです。その結果、マンUの収入内訳の構成をみると、入場料収入が20%、放映権収入が27%であるのに対し、商業収入は53%と過半を占めています。
マンUのユニフォームの胸には米国の自動車メーカーである「シボレー」、公式スポンサーには、アディダス、エーオン(Aon=米国の保険、コンサル企業)をはじめ、様々な業種の24社が名を連ねており、日本企業も「関西ペイント」「日清食品」「グループス(ゲーム会社)」「セイコーエプソン」「ヤンマー」「万田酵素」「東芝メディカル」の7社が入っています。「商業的な人気」という点では、マンチェスター・ユナイテッドのネームバリューはとても高いと言えますね。
つい5年ほど前には、マンUの収入構造は、入場料、放映権、商業の各収入がほぼ3分の1ずつで「非常にいいバランスを持っていた」ことで知られていました。
ところが、ここ数年で商業収入が肥大化し、ちょっといびつな構造になってしまい、他のビッグクラブとほぼ変わらない構造になってしまった、と言うことができます。
プレミアのチームがなぜ稼ぐのか
中国でも大人気、世界200カ国以上に中継されているという現実
デロイトの「フットボール・マネーリーグ」のレポートでは、サッカー・ビジネスが引き続き拡大していることも大きな特徴として挙げています。
今回の上位20クラブの収入合計は、前年より12%増の74億1700万ユーロ(8900億円)に達しています。2017年シーズンにはいよいよ1兆円の大台に乗る可能性も十分に出てきたと言えます。
なかでも、イングランド・プレミアリーグのクラブが20の中に8クラブも入っているのが目立ちます。トップのマンUをはじめ、マンチェスター・シティ、アーセナル、チェルシー、リヴァプール、トッテナム・ホットスパー、ウエストハム・ユナイテッド、レスター・シティといった具合です。
岡崎選手が属するレスター・シティは、ブックメーカーの掛け率で5001倍という大番狂わせを演じてプレミア優勝を果たした恩恵で、初のトップ20位入りを実現しているのです。
上位30位までを見ても、この8クラブのほか、21位・ニューカッスル・ユナイテッド(21位)、サウザンプトン(22位)、エバートン(23位)、サンダーランド(29位)とプレミアリーグの4クラブが加わり、他国のクラブ勢を圧倒しています。
この背景にあるのは、プレミアリーグの放映権料が、他国のリーグと比べ圧倒的に高く、その分配金が、クラブの成績や、放映試合数に応じて各クラブに分配される仕組みとなっているからです。
ちなみに、2016-17シーズンからの3年では、国内向け放映権が約69億ユーロ(約8280億円)、海外向けも合わせると総額で約95億ユーロ(約1兆1400億円)という巨額に上っています。
国内向け放映権だけを比べても、ドイツのブンデスリーガの放映権料と比べると約2倍、スペインのリーガ・エスパニョーラの放映権料と比べると約8倍もの開きがあるのです。
「バブル」が続いているのです。
プレミアリーグは、国内の各チームに「熱いサポーター」をしっかりと抱えており、その根の張り方は他国の比ではありません。この巨額の放映権料は、全体の50%が各チームに均等配分され、残りの50%のうち25%が最終順位によって順番に分けられ、残りの25%が放映試合数に応じて配分される仕組みとなっています。
トップのマンUこそ商業収入が飛び抜けていますが、プレミアでランク入りした各チームの収入内容を見ると、すべて「放映権収入」が全収入の4割以上を占めています。優勝したレスター・シティは152億円もの放映権収入(収入全体の74%)を手にしています。
最近では「プレミア」の激しい試合ぶりは世界各国で人気を呼んでおり、2015-16シーズンは、世界の210カ国以上で放送されており、試合を見た人は40億人以上とも言われています。
とりわけ東南アジアのタイやベトナム、そして中国での「プレミア」の人気は高く、中国国内でのプレミア放映権争奪戦が大きな話題となっています。
2018-19シーズンまでは「新英体育(スーパースポーツメディア)」が6年間・10億元(約160億円)の契約を結んでいたのですが、ここへきて中国のオンライン配信会社大手のPPTVが3年間・7億ドル(約112億円)でプレミアリーグ放映権を獲得したと伝えられています。
あの名監督もライン際で「罵り合い!」
誰もがヒートアップする激しい試合ぶり
また、プレミアリーグの試合が世界各国で人気を呼んでいるのは、90分間フルに選手が動く試合ぶり、下位チームでもホーム試合では上位を食う下剋上とも言える“大番狂わせ”を演じるケースが多いこともありますが、「名将」と言われるビッグネームの監督が采配をふるっていることも挙げられます。
伊ユヴェントス、イタリア代表監督で成果を見せたアントニオ・コンテはいまやチェルシーを率いてトップを走っていますし、マンチェスター・シテイにはあのベップ・グラディオラ、マンチェスター・ユナイテッドにはジョゼ・モウリーニョ、トッテナムには「走るサッカー」を標榜するマウリシオ・ポチェッティーノ、リヴァプールにはユルゲン・クロップ・・・と一筋縄ではいかない役者がそろっています。アーセナルのアーセン・ヴェンゲルも忘れてはいけませんね。
この名将たちが、サイドライン際で激しくやり合うシーン(罵り合い?)も、プレミアリーグの魅力のひとつかもしれません。
寒い国・ロシアからランクに入る「FCゼニト」とは、
新たなスタジアム「ガスプロム・アリーナ」の完成は?
今回の上位20クラブ・ランキングの中で、ロシアからただ一つ加わっている「FCゼニト」に注目してみましょう。
ロシアのサンクトペテルブルグに本拠を置く人気チームで、創立が1925年ですから92年の歴史あるチームです。ロシアリーグでは、毎年、ライバルであるCSKAモスクワ、スパルターク・モスクワと上位を争い、近年では2010年、11年、15年にタイトルをとっています。毎年UEFAチャンピオンズリーグに顔を出してきていますが
1試合平均の観客動員数は約1万が7000人と少ないのですが、なにせ寒い国ですから仕方ないのかもしれません。
2005年から、ロシアの天然ガス会社である「ガスプロム 」 が経営に加わり、そこから豊富な資金力を背景に強くなり、2008年5月には初の国際タイトルであるUEFAカップを制覇しています。
2014-15シーズンに初めて「デロイト・フットボール・マネーリーグ」の18位に上がり、収入の72%が商業収入(スポンサー広告費など)で上げているのが特徴です。
ロシアでは2018年ワールドカップが開催される予定で、ゼニトの本拠地であるサンクトペテルブルグでもメイン会場のひとつとなるべき、「ガスプロム・アリーナ(6万8000人収容)が本来ならば2016年末には完成しているはずなのですが、まだ「完成した!」というニュースは飛び込んできません。プーチン大統領は「ワールドカップ開催に何も問題はない」と言っているそうです。