「フェイスブック」の収益力と財務力を分析。やっぱりすごいのか、それとも・・・?

アジア・太平洋地区での売上高は2倍増加を記録

facetop

 

 

ソーシャル・ネットワーク・ビジネスでいまや世界に8億4500万人のユーザーを持ち、1日当たりの書き込み数は27億件、アップされる画像は2億5000万枚に及ぶというフェイスブック。

その威力はアフリカで“革命”を起こし、人々の日常生活のシーンにも欠かせないものともなっています。

 

そのフェイスブック社が2月1日に株式上場申請をしたのに伴い、米国SEC(米証券取引委員会)へ申請書を提出。199ページにも及ぶ資料から営業収益(売上高)や利益、財務内容などが明らかになっています。

そこで今回は、その資料から簡単な財務分析を行い、いま米国を代表する企業4社(グーグル、アマゾン、マイクロソフト、アップル)と、その数字を比べてみました。

 

(EXCELで作った表なので、少し見にくいかもしれませんが・・・)

 

これらは、それぞれ業態が違うので、比較対象として適当とは言えないのですが、フェイスブックの実力を図る大ざっぱな目安として参考になる部分があるかもしれません。

Facebook-2

 

 

対売上高営業利益率はグーグル、アップルを上回る水準

フェイスブックは2004年にそのサービスが開始され、「企業」としてのかたちになってまだ5年ほどという超若い企業です。これまで「30億ドルぐらい」、とも「40億ドルを超えているかもしれない」とも“推測”されてきた売上高は、2011年12月期で37億1100万ドル(日本円に直すと2968億円)ということが明らかになっています。売上高の構成は、85%に当たる31億5400万ドルが「広告収入」です。

 

注目すべきはまず、その「成長スピード」でしょう。

2009年12月期の売上高(営業収益)7億7700万ドルがいまや37億1100万ドルへ。この2年間で4.8倍になっています。

もちろん歴史が浅いということもありますが、ここ2年間はアップルの2.5倍、アマゾンの1.9倍を上回る水準を記録しています。まだ、「規模は小さい」という段階ですが、もしフェイスブックが、この年率200%の伸び率を今後も続けていくと、2016年度には1000億ドル企業となります。どんなカーブを描いていくか、その際に、売上高の内容が変化していくのでしょうか?

 

次の注目点は、「利益率」です。

対売上高営業利益率は、47.3%。これは非常に高い水準と言えます。抜群の収益力を誇るマイクロソフトの38%、アップルの31%、グーグルの30%と先輩企業を凌駕しています。

モノを製造しているわけではないので、原価率の低さは当たり前とも言えますが、非製造業(サービス業的な)業態で、販売費・一般管理費が10%ちょっとというところに、フェイスブックのSNSビジネスの「おいしさ」がある感じです。

 

財務内容でも「健全性」は優良水準にある

企業体質の健全性を観る指標としてよく用いられるのは「自己資本比率(株主資本比率)」です。米国企業は日本企業などと比べて総じて高い水準にありますが、その点で、群を抜いているのはグーグルの80%台という水準です。ただ、フェイスブックも77%という「優良な」水準で、グーグルとそん色はありません。

 

また、同様に健全性の指標である「流動比率」は、すぐに現金化できたり、預貯金、キャッシュなどの大きさ(いわゆる“手元流動性”の大きさ)を示すものですが、一般的には200%を超えていれば優良とされています。

フェイスブックの流動比率は267%台と合格点です。

他の、グーグル、マイクロソフト、アマゾンも200%を超えているのですが、この点で異彩を放っているのはアップルです。流動比率は63%と極めて低い水準なのです。これは、この1年で固定資産の中の「長期投資」という項目が急激に膨張しているためです。内容は定かではありませんが「アップルが、特許や他企業の知的財産を積極的に購入している」と言われていることと関連がありそうです。

 

フェイスブックの現金・預金の額はそれほど多いわけではありませんが、ここ1年で「売却可能な証券類」が23億9700万ドル保有しています。米国の国債や政府債券類がその中身です。

 

このように見てくると、フェイスブックの収益力・財務体質は、現時点で、やはり「すごい」と言えると思います。

比べてみた企業とは、規模的にはまだ10分の1以下ですが、ベンチャー企業としてのダイナミックなパワーは十分です。ただ、この勢いが、どこかで鈍ってきた際に、新たなエンジンをどう吹かすか、そこが本当の注目ポイントと言えるでしょう。

 

今回提出された申請書には、経営陣の顔触れや、創業者マーク・ザッカ―バーグをはじめとするトップマネジメントの“報酬額”なども載せられています。

<役員陣>

Mark Zuckerberg        27歳(CEO)

Sheryl K. Sandberg      42歳(COO)

David A. Ebersman       42歳(CFO)

David B. Fischer           39歳(Vice President)マーケティング

Mike Schroepfer         36歳(Vice President)技術担当

Theodore W. Ullyot      44歳(Vice President)  法務

Marc L. Andreessen      40 歳(Director)監査・ガバナンス担当

Erskine B. Bowles       66歳(Director)監査担当

James W. Breyer         50歳(Director)報酬担当

Donald E. Graham       66歳(Director)報酬・ガバナンス担当

Reed Hastings          51歳(Director)ガバナンス担当

Peter A. Thiel          44歳(Director)監査担当

 

推定資産額175億ドルとも言われているマーク・ザッカ―バーグのベースサラリーは、申請書によれば50万ドルとなっていますが、外国企業の報酬ではストックオプションや株式割り当てなどさまざまなかたちでの報酬が加わってきますので、実際、どのくらいの「年収」になっているのか、ちょっとわかりません。フェイスブックに興味のある方は、ぜひ読み解いてみてください。

 

Facebook 上場申請書類: