やっぱり「勝ち進むことに意義がある!」、サッカー・ビッグクラブの収入を左右するもの

UEFAチャンピオンズリーグの報奨金の仕組み

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国際的な監査法人「デロイト(DELOITTE)」が、毎年2月に「世界のサッカークラブの収入ベスト20」を発表していますが、このほど前シーズン(2010-11)の結果が発表されています。

今回はその内容を紹介します。

(詳細はデロイト社のサイトを参照ください。http://www.deloitte.com

 

まずは『サッカークラブの収入上位20(2010-11シーズン)』です。

順位   クラブ名          年間収入額  (円換算・前年比・前年順位)

1位 レアル・マドリード(スペイン)  4.79億ユーロ (490億円・109%・1位)
2位 バルセロナ(スペイン)      4.50億ユーロ (459億円・113%・2位)
3位 マンチェスターU(イングランド) 3.67億ユーロ (374億円・105%・3位)
4位 バイエルンM(ドイツ)     3.21億ユーロ (328億円・▼0.5%・4位)
5位 アーセナル(イングランド)   2.51億ユーロ(256億円・▼8.4%・5位)
6位 チェルシー(イングランド)       2.49億ユーロ (255億円・▼2.4%・6位)
7位 ACミラン(イタリア)     2.35億ユーロ (240億円・▼3.7%・7位)
8位 インテル(イタリア)      2.11億ユーロ (216億円・▼6.0%・9位)
9位 リヴァプール(イングランド)  2.03億ユーロ (208億円・▼9.8%・8位)
10位 シャルケ04(ドイツ)          2.02億ユーロ (207億円・144%・16位)
11位 トッテナム(イングランド)   1.81億ユーロ (185億円・124%・12位)
12位 マンチェスターC(イングランド)1.69億ユーロ (173億円・111%・11位)
13位 ユヴェントス(イタリア)  1.53億ユーロ (157億円・▼25.0%・10位)
14位 マルセイユ(フランス)     1.50億ユーロ (154億円・116%・15位)
15位 ローマ(イタリア)       1.43億ユーロ (147億円・117%・18位)
16位 Bドルトムント(ドイツ)   1.38億ユーロ (142億円・131%・ランク外)
17位 リヨン(フランス)     1.32億ユーロ (136億円・▼9.2%・14位)
18位 ハンブルガーSV((ドイツ) 1.28億ユーロ (132億円・▼12.0%・13位)
19位 バレンシア(スペイン)         1.16億ユーロ (119億円・116%・ランク外)
20位 ナポリ(イタリア)              1.14億ユーロ (117億円・124%・ランク外)

※円換算額は1ユーロ=102円で換算しています。

 

上位陣の顔ぶれは1位から7位までは前年と変わっていません。

とくに、トップのレアル・マドリードは今回で7年連続して首位の座を維持しています。安定した人気と好成績をベースにしたスポンサー収入・コマーシャル収入はライバルのバルセロナを10%上回っています。

20位リストでは、前年から、アトレチコ・マドリード(スペイン)、シュトットガルト(ドイツ)、アストンビラ(イングランド)の3チームがランク外に去っていて、代わりに、Bドルトムント(ドイツ)、バレンシア(スペイン)、ナポリ(イタリア)が入ってきています。

 

今回、大きな話題を呼んでいるのは、この20クラブの中で、もっとも大きな伸びを示したドイツのシャルケ04の躍進ぶりです。前年の16位から、ベスト10に入ってきているからです。日本代表DF内田篤人が所属するクラブとして日本でもよく知られています。

 

シャルケ04の年間収入は、前年比で44%増加を記録しました。

この主な要因は、欧州各国リーグの上位チームが参加資格を持つUEFAチャンピオンズリーグでベスト4に進出したことです。グループリーグへの出場、4勝1分1敗でのトップ通過、決勝トーナメントでもバレンシア、インテルを下したことで、勝利ボーナスなどで2130万ユーロ(21億7260万円)、商業権・放映権料などの分配金が1845万ユーロ(18億8190万円)が入ってきています。UEFAチャンピオンズリーグの快進撃で合計40億円以上を稼ぎ出したというわけです。

 

このようにシャルケ04の年間収入の約4分の1がUEFAチャンピオンズリーグ関連であることからわかるように、欧州サッカークラブチームにとってはリーグで好成績を上げてUEFAチャンピオンズリーグに参戦できるかどうかが「クラブの台所を左右する大きな要因」となっているのです。(ちなみに、南米やアジアにはこれだけ巨額が動くカップ戦はありません)

 

では、UEFAチャンピオンズリーグの出場・勝利ボーナス、分配金がどのような仕組みになっているのかを観てみましょう。(2011年実績)

・グループステージに参加できる32チームに与えられる出場ボーナスは各チームに390万ユーロ(3億9780万円)

・グループリーグでの1試合ごとに55万ユーロ(5610万円)、グループリーグは計6試合あるので、330万ユーロ(3億3666万円)

・1勝ごとに80万ユーロ(8160万円)、1引き分けではその半額の40万ユーロ(4080万円)の勝利ボーナス

・決勝トーナメント1回戦に進出した16チームには、各チームに300万ユーロ(3億0600万円)、ベスト8に進出すれば各チームに330万ユーロ(3億3666万円)、ベスト4に進出すれば420万ユーロ(4億2840万円)、決勝進出で、優勝すれば900万ユーロ(9億1800万円)、準優勝でも560万ユーロ(5億7120万円)

 

次から次へと巨額なマネーが動いてくるわけです。まさに、「出場し、勝ち進むことに意義がある」というのがこのUEFAチャンピオンズリーグと言えます。

 

しかも、収入はこれだけではありません。各チームには「マーケットプール」と呼ばれるUEFA全体のメディア商業権収入(主にテレビ放映権料とスポンサー広告収入)を、各国の広告やテレビ放映事情(市場規模など)に応じて配分する分配金が入ってきます。分配金は、いったんその国のサッカー協会に配分され、そこから各チームに振り分けられたり、直接、各クラブに配分されたりする仕組みになっています。

 

UEFAチャンピオンズリーグにはオフィシャルサプライヤーであるアディダスをはじめ、マスターカード、ハイネケン、フォード、ユニクレジット、ソニー(契約延長が微妙?)などが公式スポンサーになって巨費を投じており、決勝トーナメントに入れば、出場チームの地元国が盛り上がるだけでなく、世界の各国でテレビ中継されるようになりますし、決勝戦を生中継で観る人は世界中で1億人を上回ると言われています。勝ち進めば、それだけ放映権料の分配が増えていく、というわけです。

 

ちなみに、20110-11で、優勝したバルセロナには、出場・勝利ボーナスで3070万ユーロ(31億3140万円)、分配金で2032万ユーロ(20億7264万円)の合計52億円以上が入ってきています。

ただ、これを上回ったのは準優勝したマンチェスター・ユナイテッドで、出場・勝利ボーナスは2730万ユーロ(27億8460万円)でしたが、放映権料などの分配金は2590万ユーロ(26億4180万円)で、合計の収入は53億円とバルセロナの上を行きました。

これは、英国でのテレビ放映権料の相場が欧州の他国に比べ高い、という事情を反映したものだと言えます。

 

ビッグクラブは、このUEFAチャンピオンズリーグでの上位進出が、至上命題となっています。「ビッグイヤ―(The Big Ear)」と呼ばれる優勝カップを手にし、欧州ナンバーワンという称号を得るのはもとより、このような莫大な収益が約束されるからなのです。

逆に、早々と敗退となれば、即、収益に響いてきます。2012シーズンでは、早々とグループリーグでの敗退が決まり、決勝トーナメントに進めなかったマンチェスター・ユナイテッドは「入場者収入や広告収入・グッズ販売などへの影響を含めると、1億ユーロ(102億円)ぐらいの収入減となる」と言われています。

 

UEFAチャンピオンズリーグで勝ち進めば、直接的な収入増効果ばかりでなく、さらにクラブ人気は高まり、スポンサー収入、グッズ販売。集客力にも大きな影響を与えます。しかし、各国のリーグ戦と並行して行われるこの戦いで勝ち進むためには、選手層の厚さ、しかもレベルの高い選手を多く抱えなければなりません。そこには膨大なコストが掛かります。サッカーのビッグクラブにも、常に「収入とコスト」という基本的な課題が付いて回っているわけなのです。