『肥満税』で本当に”太った人”が減るのだろうか?   「関係ない人には関係ない」けど、「関係ある人には関係ある税金」の話!

"肥満税"に関する正しい知識?

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“肥満税”って、知ってましたか?

「エーッ、太ってると税金取られちゃうの?」

「好きで太ってるわけじゃないのに、不公平!」

と思ってしまうのも無理ありません。そもそも「肥満税」なんて、実際にあるのかと思われてしまいますし、「どこか、名の知らないよう国のヘンな税金じゃないの?」と言われてしまいそうな税金です。

 

「世界一の肥満国」メキシコで、議会は“肥満税”が成立!

 

ところが、2013年11月、話題となったのが「メキシコで肥満税が施行へ!」というニュースでした。

その内容は、メキシコ議会が肥満対策の一環として、「高カロリー食品に対しては8%、炭酸飲料に対しては1リットル当たり1ペソ(約8円)の新たな課税を行う」ということを可決してしまったのです。ペニャニエト大統領も署名し、「肥満税」は堂々と施行されることになったのです。

 

メキシコでは、2007年にも同様な肥満税が議会に提案され、その時には上院で可決されましたが、下院で否決され、実現しませんでしたが、今回はアッサリと上院・下院とも通過してしまった、というわけです。

その背景にあったのは、国連食糧農業機関(FAO)がまとめた国別の肥満度調査により、メキシコは2013年の「肥満度・世界トップ」の座についてしまったからです。

それまではトップのアメリカに次いで2位だったのですが、ついに、永く肥満度世界一を守っていたアメリカを追い抜き、肥満度は32.8%に達し、実に「成人の3割は深刻な肥満!」と認定されたのです。

 

「メキシコの食」の大きな特色は、一人が1年間に飲む炭酸飲料の量が163リットルと世界に群を抜いて多いことです。その量は、アメリカの4倍、日本の実に80倍といったレベルで、「赤ちゃんもコーラを飲んでいる」と言われるほどなのです。

ちょっとやそっとの肥満防止キャンペーンでは、さほどの効果は見込めませんから、「となれば、税の威力で何とか肥満対策を!」と考えるのも無理ないのかもしれません。

 

「世界一の肥満国」メキシコで、議会は“肥満税”が成立!

 

世界で初めて「肥満税」を導入したのはルーマニアだと言われています。

2010年3月にファストフードのフライドポテトや、肥満と関連があるとされるスナック菓子類に課税し、別名「ジャンクフード課税」と呼ばれました。

ルーマニアでは人口の4人に一人が「肥満」とされ、加えて、ルーマニアの財政を圧迫していたのは、万年赤字に陥っている保険医療制度だったのです。

そこで、肥満税による年間10億ユーロ(約1400億円)の税金収入を、その補填に使おうと考えてわけです。

 

つまり、肥満税というのは、

「肥満対策(=健康)」、「医療費の削減(保険制度維持)」「税金収入の新規開拓」という3つの大きな目的を持った税金、ということができるようです。

 

「脂肪を多く含む食品への税金」、デンマークの肥満税がたどった道

 

2011年10月には、デンマークでも、飽和脂肪を含む食品(バター、牛乳、ピザ、食用油、肉など)に税金を掛けるという肥満税を施行しました。これは「飽和脂肪多含有食品税」とも呼ばれました。

この肥満税実施のため、バターで言えば、250グラムで、価格は従来15クローネ程度だったものが18クローネ(約250円)に値上がりしたのです。値上がり率にすると、バターで平均15%、オリーブ油では71%にも達し、そのため、実際の施行前には「買いだめの駆け込み需要」が起こったのです。

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しかし、このデンマークの肥満税には意外な結末が待っていました。わずか1年後に、議会は「この肥満税の廃止」を余儀なくされたのです。

というのも、肥満税による食品類の値上がりにより、デンマークの人たちは、わざわざ隣国のドイツまで出掛けて行って、食品を買い込んで帰ってくるということが流行になってしまったのです。国境付近の都市では、食料品店が相次いで休業に追い込まれ、失業がドンドン増えていってしまったのです。

「国民の食生活は改善されず、ただ失業者が増えていっただけ。これはたまらん」という結果を生み、デンマークの肥満税はあえなく1年で姿を消すことになってしまったのです。

 

肥満税が日本に誕生する可能性は?

 

2011年9月、ハンガリーで砂糖や塩分を多く含む食品に対する課税(「ポテトチップ税」と呼ばれている)、2011年12月、フランスで砂糖の添加された炭酸飲料に対する課税(「ソーダ税」と呼ばれている)など、そのほかの国では、現在も肥満税が実施されています。

 

アメリカでも、15年ほど前に、エール大学食料政策・肥満対策センターのケリー・D・ブラウネル所長が「肥満対策への税金活用」を発表し、以来、現在では約25以上の州で、自販機の炭酸飲料を中心に、砂糖菓子、ジャンクフードなどへの肥満税があるそうです。

 

では、この「肥満税」、日本に登場する可能性はあるのでしょうか?

 

それを考えるときに、国連食糧農業機関(FAO)が発表した国別の肥満度調査を見てみましょう。

世界保健機構(WHO)の基準では、BMI値25以上が「やや肥満」、BMI値30以上が「肥満」というラインですが、この肥満度ランクは、「全国民に占める肥満の人の割合(%)」を指名しています。

 

<トップ10>

1位:メキシコ       32.8%
2位:アメリカ       31.8%
3位:シリア        31.6%
4位:ベネズエラ      30.8%

4位:リビア        30.8%.
6位:トリニダード・トバゴ 30.0%
7位:バヌアツ       29.8%
8位:イラク        29.4%

8位:アルゼンチン     29.4%
10位:トルコ       29.3%

 

ちなみに、日本の肥満人口は、4.5%と先進国の中では最も低いレベルで、全体での順位は「不明」です。

 

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つまり日本は、グローバルな観点で言えば極めて「肥満小国」で、世界各地で日本食が高い人気を集めているのは「ヘルシー」という点です。

 

その日本で「肥満税」が登場するのは、国際的にはかなり「奇異」な感じに捉えられそうです。実際、肥満税が導入された国でも「実際には、反対と感じている人は多く、それを抑え込んでいるのが、国際的な肥満国というポイントと深刻な健康問題」と言われています。

その意味では、日本では肥満税への大義名分がつけにくい、といった面もあり、肥満税が実現する可能性はかなり低い、と言えそうです。