第2回

「未来」についてわかっているのは、二つのことでしかない!!

われわれは未来について、次の2つのことしか知りません。
(1) 未来を知ることはできない。
(2) 未来は、今日存在しているものや、今日予測しているモノとは違う。

この言葉は、経営学者であるピーター・F・ドラッカーが1964年に著した『創造する経営者』の中に記されているものです。
ドラッカーは「未来は、今日とは違う。予測できないものであるがゆえに、予測せざることや、予期せざることを起こさせることが可能である」と説いているのです。

 

いま、起業する人が増えていると言われています。男性だけでなく、女性も。そして、「定年後の起業」といったケースだけでなく、学生時代に自ら会社を立ち上げる人も多く出ています。
そんな時代に、このドラッカーの言葉は、大きな支えになります。

「スターダム」へ駆け上がるか、一夜にして「経営破綻」か!

一般に公開されてわずか1年足らずの人工知能「チャットGPT」は、コンテンツ制作、学生の論文作成、法制度の判例検証、自動応答システム、オンライン学習など・・・その活用法が社会的なテーマになり、いまやグーグルやヤフーを揺さぶる存在感さえ見せています。

その逆もまた然り。アフターコロナの時代に入って、ビジネス社会には想定していなかった事象が頻繁に起こっています。

暗号資産バブルの崩壊によって米国の小規模銀行・シリコンバレーバンクが経営破綻、その恐怖心は「ネットバンク経由の取り付け騒ぎ」となり、SNSによって伝播され、ひいては24時間後に、その総資産額がスイスのGDPの約7割に当たると言われていたクレディ・スイス銀行の破綻へ連鎖していく時代です。

「ブラジルの蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす」(日本的に言えば「風が吹くと桶屋が儲かる」)と例えられる“バタフライ効果”は、いまそのスピードも規模も、人々の想定をはるかに超えようとしています。

もはや「業種の壁」も「括り」も意味をなさない!

もはや、「業種」とか「〇〇業」といった言葉は、すべての企業・業態がネット産業、サービス産業となるなかで、なんら意味を持たなくなっています。
企業のライバルはあらゆる方向から出現してきます。
そこには大企業、中小企業といった“括り”さえも無意味になっています。
これまでも、いくつかの「帝国」と呼ばれた巨大企業の存立を揺るがしたのは、たった一人の知恵と勇気だったことを忘れてはならないでしょう。

「資金がないからできない」という“言い訳”は、もはや陳腐でしかないとも言えるでしょう。アイデアさえよければ、着眼点さえ注目されれば、クラウドファンディングによって、明日、その開発資金の問題が解決するかもしれないのです。

成功の糸口も、破綻へのキッカケも、まさに「明日の風とともに」やってくるのかもしれないのです。

「ないから、作ってくれって言ってんだ!」

地盤・シェア・歴史・伝統・市場・顧客・・・。培ってきたものの大切です。
「守っているだけでは失われる」時代だからこそ、なおさらです。

明日の時代の主役の座は誰でしょうか?
次の舞台の主役となる企業は、いま、どこに存在しているのでしょうか?
市場のニーズに応えるだけでなく、市場そのものを創り、変革できる経営。
新たな常識を生み出すことのできる経営・・・。

かつて、本田宗一郎とともに、本田技研工業の礎を築いた藤沢武夫は、本田宗一郎の創作意欲を掻き立てるために、こう言っていたそうです。
「ないから、作ってくれって言ってんだ!」