50億円突破! いま、「せんべい・あられ」の輸出が伸びている!

世界の“巣ごもり消費”を取り込み、過去最高の水準へ!

東京税関などの調査によれば、いま「せんべい・あられ」の輸出が伸びており、過去最高水準を突破し、さらに勢いを増しているそうです。この背景にあるのは、ここ2年半以上も続いた世界的なコロナまん延での「巣ごもり需要」です。「外に出られない」となると、やっぱり「せんべいをポリポリ、カリカリ」(テレビの前で?)というのは、日本だけでなく、海外でも流行ってきているようです。

 

年間50トン、50億円のラインを突破!
「わさび味」や「軽い食感タイプ」が人気!

日本貿易月表から「米菓(せんべい・あられ)の輸出」を見てみましょう。

     輸出数量      輸出金額
2017年  3,849トン    41億8600万円
2018年  4,053トン    44億2500万円
2019年  4,033トン    43億0600万円
2020年  4,222トン    45億3100万円
2021年  5,141トン    56億3700万円

2018年、2019年はほぼ横ばい、といった感じでしたが、2020年のコロナ禍の中で伸び始め、過去最高になり、昨年2021年にはさらに勢いを増して、数量で前年比21%増、金額ベースで24%増を記録し、年間50億円の大台に乗っています。

今2022年に入ってからも、第一四半期(1~3月)は数量、金額ともにほぼ前年並みをキープしており、「コロナが少し落ち着いた後もこの水準を維持できれば、輸出好調が定着していく」と期待されている。

日本では日常のおやつから贈答品まで幅広く需要のある「おせんべい・あられ」は、海外では「Rice Cracker」と呼ばれて親しまれているようです。
全国米菓工業組合によると、海外では、昔ながらの醤油味の硬いせんべいよりも、軽い食感や甘いもの、「わさび味」や「山椒味」など、スパイス系や辛みのあるものなどのほうが人気の傾向があるそうです。

実際、海外の声を聞いてみると
「日本の食材を活かしたお菓子はとにかくおいしい」(アメリカ)
「しょうゆ焼きのせんべいは、砂糖を使っていなくてヘルシーだから好き」(イギリス)
「せんべいはみんな好きで、中でも数年前に一度『朝日あげ』を貰って、本当においしかったので定期的に購入している」(中国)
「食べやすいし、食感が軽くておいしい。バーやパブでも食べられているよ」(フランス)
「スパイスの効いたおせんべいが好みで、ビールのつまみでは最高だね」(アメリカ)
「わさび味や薄い塩味のせんべいがスーパーなどでよく売れているよ」(オランダ)
といった好感度があるようです。

食感、味などが海外で好評の「朝日あげ」

輸出先はアメリカ向けがトップ
アジア諸国へ拡大。サウジアラビア向けも増勢!

うるち米を主原料とする“せんべい”と、もち米を主原料とする“あられ・おかき”は『米菓』と総称され、日本独特の焼き菓子といわれています。
食感は、しっかり歯ごたえのあるものから、ふんわりサクサクしたもの、しっとり濡れ感のあるものまでバリエーションに富んでいます。
また、味も、生地の風味を生かしたものから、醤油、塩、わさび、カレーパウダーなどで味付けされたもの、ザラメ糖やゴマ、唐辛子粉などで覆われたものまで、さまざまなものがあります。

「せんべい・あられ」の輸出相手国としては、現在はアメリカがトップにたっており、全体の4分の1(25.9%)を占めています。
アメリカと並んで第2位は台湾、続いて香港、中国、シンガポールとアジアの国々が並びます。ここへきて、ベトナム、マレーシア、タイ向けも前年比20%以上の伸びを記録しています。

また、中東のサウジアラビア向けも伸びており、現在は第6位の輸出先に上がってきており、名古屋の松本貿易株式会社などが扱っている「せんべい・あられ」がスーパーや菓子専門店に並んでいるそうです。
ヨーロッパ地域でも、「健康的なお菓子」としてのせんべい・あられへの注目度が高まっており。オランダ、ドイツ、英国などへの輸出がジワジワと増えています。

米菓メーカーも輸出向けの伸びに伴って、「賞味期間を延長」などの対応策を行い、さらに拡大を図る方向にあります。

米菓メーカー大手の新潟県長岡市の岩塚製菓では、原材料の配合見直しや包材仕様の変更などで、8~9割の商品で賞味期間を延長しており、主力の「岩塚の黒豆せんべい」は120日から150日としています。
世界最大の米菓メーカーといわれる台湾の「旺旺集団」は、この岩塚製菓と業務提携しており、ともに海外市場を開拓しているよきライバルでもあり、パートナーでもあると言えます。

岩塚製菓の主力商品「黒豆せんべい」

また、北海道米菓フーズでは、海外バイヤーなどの声を聞き、早くから賞味期限が長く、油とでんぷん不使用のヘルシー焼きおかきを開発。商談会に積極的に参加し、健康志向の海外バイヤーから受注獲得しているそうです。現在、輸出比率は40%以上に達しており、香港、台湾、中国、マレーシア、シンガポール等のアジア圏だけでなく、アメリカ、カナダ、スイスからも受注しています。

“巣ごもり需要”から定着へ!
輸出増加に、賞味期限の延長などの対応策も実施

「せんべい・あられは酒のつまみになり、日本酒の輸出増加の相乗効果にも期待できる」と全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会し、米と米加工品のセットで販促する商談会なども開かれています。

「現地の“巣ごもり需要”をうまく取り込めた」と全国米菓工業組合では分析していますが、コロナ禍で「個包装」の商品が多くなっているのも輸出増加に一役買っています。港停滞や混乱が続いている港湾などの物流システムがスムーズに進むようになれば、さらに輸出量の上乗せが期待できそうです。

コロナ禍で「個包装」も人気の要因となった。

日本の「せんべい・あられ」はわさび味や山椒味などスパイス系せんべいから、小さく軽いあられや、「柿の種」など味、スタイルなどバリエーションも豊富にそろっています。
“和食”が世界各国で認知され、定着したように、この「ポリポリ、カリカリ」のせんべい・あられも日本の味文化として、グローバルに広がってほしいものです。

参考資料:
『日本貿易月表』(公益財団法人 日本関税協会)
『東京税関 貿易統計資料』