ラグビーのレフリーの「ここが面白い!!」 ラグビー・ワールドカップを3倍楽しくする「世界の超一流のレフリーたち」

巨漢たちにも埋もれない「その存在感」が試合を面白くさせる!

いよいよ今年9月20日に開幕する「ラグビー・ワールドカップ」。
南半球、北半球など世界から集まるラガーマンの「ガチの真剣勝負」も楽しみですが、このワールドカップで、もう一つ見逃せないのは、厳選された「一流のレフリー」たちによるレフリングの面白さでしょう。

何しろ身長170センチ台のレフリーが、2メートルを超す巨漢ロックを呼びつけ、毅然たる仕草で叱るシーンは、何とも言えず、痛快そのものです。

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スピーディな展開の中でも、毅然たる態度で判定を下すのが、一流のレフリー(ウェイン・バーンズ氏)の証明だ!

よく「ラグビーのルールは難しい」と言われますが、レフリーの動き、声だけを見ているだけでも、「他のスポーツと比べて、数倍もおもしろい!!」と言えます。

というのも、サッカーなどのレフリーは、試合中、ほとんどホイッスルを吹いているだけですが、ラグビーのレフリーは、大きなジェスチャーで試合を動かしたり、声を上げたり、
時には、選手にやさしく声を掛けたり、「小言を言って、注意したり」・・・とまさに、試合を演出する主役(副審やビデオ担当レフリーを含めると4人ですが)、と言えるからです。

ワールドカップ2019に選ばれたツワモノ・レフリー12人。
ゲームを演出する「威厳」タップリで明確な判断

しかも、ワールドカップとなると、レフリーも選ばれた人だけ。それも、「威厳タップリ」。一人ひとり、レフリングの「癖(くせ)」や「特徴」を持っている人たちが、集まってくるのです。

いま、出場する国では、それぞれ選手の最終選考段階に入ってきていますが、ラグビーユニオンの国際統括団体である“ワールドラグビー”が、ワールドカップのレフリーを務める12人をすでに選出。その他に7人のアシスタント・レフリー、4人のTMO(テレビ・マッチ・オフィシャル=映像担当レフリー)が選ばれています。
日本からは久保修平さんが、アシスタント・レフリーに選ばれています。

総勢で23名のマッチオフィシャル(審判団)は、『チーム21(大会に参加する21番目のチームの意)』と呼ばれます。

選考委員会によって選ばれたレフリー12人というのは、まさに「超一流のお墨付き!」と言えます。
その顔ぶれは、というと、
ウェイン・バーンズ氏 Wayne Barnes (イングランド)
ナイジェル・オーエンス氏 Nigel Owens (ウェールズ)
アンガス・ガードナー氏 Angus Gardner (オーストラリア)
ルーク・ピアース氏 Luke Pearce (イングランド)
ジェローム・ガルセス氏 Jerome Garces (フランス)
ローマン・ポイト氏 Romain Poite (フランス)
パスカル・ガウゼル氏 Pascal Gauzere (フランス)
マシュー・ライナル氏 Mathieu Raynal (フランス)
ヤコ・ペイパー氏 Jaco Peyper (南ア)
ベン・オキーフ氏 Ben O’Keeffe (ニュージーランド)
ポール・ウイリアムス氏 Paul Williams (ニュージーランド)
ニック・ベリー氏 Nic Berry (オーストラリア)

大きなジェスチャーでわかりやすいヤコ・ペイパーさん。
巨漢たちに囲まれても、しっかり目立つ!

その中で、私の一押し。いま、もっとも好きなレフリーは、南アフリカのヤコ・ペイパーさんです。

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とにかくジェスチャーが大きく、明確なヤコ・ペイパー氏

やや小柄で、髪の毛が後退しているので、ピッチ上ではヒタイのほうが目立ちますが、ヤコ・ペイパーさんは、とにかくジェスチャーが大きくて、分かりやすいのと、レフリングが早くて、キレがあります。
そのため、試合もスピ―ディーになることが多く、時間があっという間に過ぎていってしまいます。TMO(テレビマッチ)で確認するかどうかの決断も早く、(選ばれた人は皆そうですが)、判定に文句を言うヒマもありません。

危ないプレーには、選手を呼んできちっと説教しますし、過度に「イエロー・カード」を乱発することもありません。まだ39歳ですが、そのレフリングは安定感があります。

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「向こうが先に手を出したんですよ!」「だからといって、報復行為は許されないんだよ!」と「わかりやすく」注意を与えるヤコ・ペイパー氏

ラグビー・レフリーとしては「最高の栄誉」とも言える“レフリー・オブ・ジ・イヤー」をすでに3回も受賞していますし、スーパー・ラグビーの試合は100試合以上も笛を吹いています。すでに、日本にも何度か来て、テストマッチの笛を吹いていますが、ぜひ、ワールドカップという大舞台で、ナマで見たいレフリーがヤコ・ペイパーさんです。

「レフリング」の癖(くせ)をアタマに入れておく
「勝ち」へつながる「レフリー分析」に各国とも力が入る

レフリーの立場はもちろん「厳正・中立」「公平・無私」ですが、そうは言っても、レフリーも人間ですから「癖(クセ)」がどうしても出てきます。

アタック側に少し肩入れするタイプ、逆に、アタックには厳しくいくタイプのレフリーもいます。
特に、微妙な判定になりがちなスクラムの場面などでは「コラプシング(故意にスクラムを落とす)」反則を多くとるタイプ、あまり気にしないタイプ。ラインオフサイドなどの反則も、応援している側から見ると「ついつい あれはアウトだろぅ」と思ってしまう場面も多く、こういったレフリーの癖を理解した上でプレーすることが、非常に重要な戦略となってきます。

もちろん、ワールドカップに選ばれるようなレフリーは「偏った判定が少なく」、誰が見ても、選手から見ても「納得がいく判定」を下すレフリーが揃っているはずなのです。
ラグビーの試合中には、「ノットロールアウェー(タックル後に倒れた選手がその場を離れずに進行を妨げる反則)」、「ノットリリースザボール(タックルされたプレーヤーがボールを放さない反則)」、「オブストラクション(味方同士が重なり相手ディフェンスの妨害をする反則)」など、判断が非常に微妙になるシーンも次々と起こるので、それぞれ、絶対的権限を持つレフリーが、どんな判定を「下しやすい」かを知っておくのは、勝敗を大きく分けることにもなりかねません。

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一流のレフリーにもそれぞれクセがある(ローマン・ポイト氏)

そのため、出場各国とも「レフリー分析」には、とても力を入れており、担当するレフリーが決まると、そのレフリングの特徴をしっかりとアタマに入れて、試合に臨んできます。

日本ラグビーの歴史的「南ア勝利」にも「レフリー分析」が貢献
キャプテンの役割は、レフリーとのコミュニケーション!

その意味でも、忘れられないのは、今回のワールドカップ・レフリーにも選ばれている、フランスのジェローム・ガルセスさんです。
そう、世界のラグビー史に残る「ジャイアント・キリング」と言われた、2015年ワールド・カップ、日本・南ア戦の笛を吹いたレフリーです。

特に、日本側に有利な判定をしてくれたというわけではありませんし、あの試合は、後から何度見ても公平なレフリングの試合でした。

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今回のワールドカップのレフリーにも選出されたジェローム・ガルセス氏。TMOと連絡をとる。

ガルゼスさんのレフリングの特徴は、「ノットロールアウェー」の反則を多くとること、スクラムの優勢・劣勢を、試合の前半に見極めることが多い、という点です。

当時の日本代表監督を務めていたエディー・ジョーンズは、その前年の夏合宿にガルゼスさんに日本に来てもらっており、練習試合を何試合か笛を吹いてもらっていました。

レフリーとしてのテクニカルなもの、たとえばスクラムの反則をどういう基準で判断するのか、ブレイクダウンをどのようにレフリングするか、選手とのコミュニケーションをどのように取っているかなどを実際に見ていたのです。

また、レフリー分析担当者(平林泰三さんと中島正太さん)が、ガルゼスさんが吹いた過去の試合を検証して、ペナルティの数を調べ、スクラムが何パーセント、ラインアウトが何パーセント、アタック側に何回、ディフェンス側に何回というデータまで調べていたのです。

多くのレフリーに関して、「こういった分析情報データ」を集めておいて、その上で、ガルゼスさんが「日本・南ア戦」の笛を吹くことが決まった際に、それらを戦略の中に組み込んでいったのです。

最高峰レフリーはナイジェル・オーエンスさん。
ユーモアたっぷりの「お小言」が選手を集中させる!

今回のラグビー・ワールドカップのレフリーの中でも、最高峰、まさに大スターと言えるのは、ウェールズのナイジェル・オーエンスさんです。
4回連続してのワールドカップ出場となり、前回の2,015年には決勝戦も主審を務め、すでにテストマッチの笛は80回以上も吹いています。

オーエンスさんの真骨頂は、まさに「コミュニケーション」。キャプテンと和気アイアイと話していたかと思えば、プレーによっては、まさに「カミナリ」のような怖い顔になります。オーエンスさんに指差されただけで、興奮している大男たちも「縮み上がる!」と言いますし、時には、やさしく慰めてくれることもあります。

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「そこのナンバー8、君だね!」。このナイジェル・オーエンス氏に指を差されたら逆らえない!

2015年W杯で、危険なスライディング・ダイブをしたスコットランドのFB、スチュワート・ホッグに対し、「もし、もう一度ダイブがしたいなら、2週間後にここに戻ってきてプレーするんだ。今日じゃなくてね!」。
実はこの南ア対スコットランド戦が行われたのは、セント・ジェームズ・パーク(ニューカッスルのホームスタヂアム)で、2週間後には、サッカーのゲームが予定されていたのです。
オーエンスさんの、センスたっぷりの「お小言」は、炸裂し始めると止まりません。
さて、今回のワールドカップで、オーウェンスさんの「お小言」の標的になるのは、果たして誰なのでしょうか?

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 時には、選手を慰め、諭すように話しかけるオーエンス氏

 

テレビも意識したコミュニケーション力が魅力のアンガス・ガードナーさん。
フィジカル・トレーニングにも余念がない!

もう一人、見逃してはいけないのは、オーストラリアのアンガス・ガードナーさんです。
昨2018年の年間最優秀レフリー(レフリー・オブ・ジ・イヤー)に選ばれたレフリーです。
子どもの頃からラガーマンを目指していたそうですが、怪我のために選手の道は断念し、15歳でレフリーへ転身しています。現在、34歳と若いのですが、そのコミュニケーション力とレフリングは、高く評価されています。
今年5月に行われたスーパー・ラグビーのレッズ対サンウルブス戦では、5枚のイエローカードと、2枚のレッドカードを出し、一流のレフリーから見て、選手のプレーの質が「大いに問題あり」ということを示す結果となりました。

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両チームがヒートアップしても、冷静に判定を下すアンガス・ガードナー氏

フィジカル・トレーニングに熱心で、ラグビー解説者の村上晃一さんから「そのたくましい腕の筋肉はレフリングに必要なのですか?」と聞かれた際に、「ピシッと素早く腕を上げるためにはね!」と応じています。
「スタヂアムの観客、テレビを見ている人にも、いま、レフリーが何をしているのか、ストーリーを見せることも大切なんだよ。私が、キャプテンを読んで話す時、テレビカメラはそこを映し出します。そこを司式していますよ」とガードナーさんは言います。

レフリーの声は「神の声」?
最高峰の舞台での、レフリーの動きにもぜひ注目を!

ラグビーの試合中には、レフリーが大きな声を出しています。(最近では、レフリーにマイクをつけた放映もあるので、生々しいやり取りを聞くこともできます)
スクラムでは
「クラウチ!」 (さぁ かがんで!)
「バインド!」 (組み合って!)
「セット!!」 (さぁスクラムだ!)

ラックやモールなどで、ボールの動きが止まると「ユーズイット!(ボールを動かさなきゃ!)」とレフリーの声がかかります。
また、ラックで双方が入り乱れての争奪戦になると「ノーハンズ!(手を使っちゃダメ!)」
と掛け声が入ります。

このように、ラグビーの試合では、レフリングのさじ加減だけでも、けっこうな見どころがあります。まして、ワールドカップのように、超一流の選手たちの、スピ―ディで質の高いプレーをレフリーがどうさばいていくのか、も見逃せないのです。

<資料>

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15790「ラグビーの意外な勝利の法則「レフリーを攻略する」
https://rugby-rp.com/2019/05/07/worldcup/35237 「ラグビー・リパブリック」

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