データ拠点の分散化、「ディザスタ・リカバリー」の重要度も高まる

2兆円が射程内に入ってきた!
「データセンター」は、いま、
増設・新設ラッシュ!

企業や官公庁の大事なコンピュータシステムや膨大なデータは、いまや災害時にも途切れてはならない「ライフライン」のひとつと言われている。

3・11の東日本大震災の後、企業の防災意識が一段と高まり、コンピュータシステムのサーバー分散化や、バックアップデータを保全する動きが加速している。

その意味で、注目されているのが「データセンター」という施設だ。

加速するデータセンターの増設・新設
2015年には1兆9000億円の市場に

データセンターは、高耐震性や高性能の自家発電設備、侵入防止装置などを備えたビルに、大容量サーバー、データ管理システムを備え、高速回線で得意先とを結んでいるもの。電子商取引を行うネット業者、金融機関、官公庁などでは、個々にこういったデータセンターを維持運営することは高コストにつながるため、専門業者のデータセンター構築会社の出番が増えているというわけだ。

米国ヤフーや、イーベイなどのサーバー運営なども専門のデータセンター業者が請け負っており、日本では2000年以降、こういったビジネスが米国から登場し、いま急速に需要が高まっている。

IT関連のビジネス調査を行っているミック経済研究所の調査では、2008年に1兆2400億円だったデータセンターの市場規模は、ここ数年、順調に拡大しており、2011年は1兆4700億円へ。
2015年には1兆9000億円市場となることが予測されるという。

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特にいま、これまで首都圏に偏在していたデータセンターを、地域的に分散させる動きが目立っており、関西地区など西日本でのデータセンターを増強したり、専門業者によるデータセンターを新設したりする動きが注目されている。

例えば、NTTデータは「西日本データセンター」内に新たなデータセンターを増設、ヤフー傘下のIDCフロンティアは北九州市の「アジアン・フロンティア・データセンター」を増設、NECは8月下旬に兵庫県にデータセンターを新設、富士通は2012年度をメドに「明石データシステムセンター」の能力を2割増強する計画を発表している。

再認識させられた
「ディザスタ・リカバリー(災害復旧)」の重要性

データセンターの新設・増設の動きは、これまでも増加基調にあったが、震災後は、特に「ディザスタ・リカバリー(災害復旧)」の観点から、その動きが加速している。

「ディザスタ・リカバリー(災害復旧)」というのは、地震・津波、台風、雷、竜巻などの自然災害や、大規模停電などで、本来のコンピュータシステムが停止したり、管理データが被害を受けた際に、すぐにシステムを復旧させ、バックアップデータにより、業務に支障を起こさないという仕組みである。

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いつどこで、激甚災害に見舞われるかわからない日本にあって、この「ディザスタ・リカバリー」の仕組みづくりは、企業や公共機関にとって、重要な課題となっているのである。

どこへでも動かせるのが魅力!
「コンテナ型データセンター」も認可され、注目へ!

もう1点、最近のデータセンターで注目される動きは、「コンテナ型データセンター」が日本にも登場してきたことである。

これまで、データセンターと言えば、激しい地震や災害にも耐える頑丈なビルの中に大型のサーバーを備えるといったイメージだったが、トラックの荷台に使われているような「コンテナ」の中に、必要最小限のサーバー機器などを備え、非常時にはどこへでも移動できるといった形式をとっているものである。

コンテナ型データセンターは米国などでは普及してきていたが、日本では建築基準法のカベがあり、認められていなかった。
それが、この2011年3月25日に、国土交通省が建築基準法の改正を行い、「コンテナ型データセンター」を認可することになり、俄然、注目度が高まっている。

コンテナ型データセンターのメリットは、ふだんは顧客の遊休地などに重ねて置いておくことができ、電力の供給不安などが生じた際に、どこへでも移動できるということ、巨額な投資が要らないこと、など。ただし、比較的、システム規模や情報量が少ない中小企業顧客向けとなる。

すでに、日立がコンテナ型データセンターの商品ラインアップを充実させており、インターネットイニシアチブ社は2011年10月に島根県にコンテナ型の基地となる「松江データセンターパーク」設置に動いている。

クラウドコンピューティングという言葉が注目される中、その基幹装置ともなるデータセンターの重要度が今後ますます高まることは必至だろう。
災害時への備え、データ・システム拠点の分散化という観点から、データセンターの市場規模が2兆円を突破するのは、予測より早まる可能性がある。

〔掲載データ出典元〕

「データセンター市場と消費電力とグリーンIT化の実態調査・2011年度版」