「体感型」も増え、特製フィギュア販売も魅力に

年間入館者5000万人時代へ!
いま「博物館」がおもしろい!

この夏、国立科学博物館で行われている「恐竜博」が人気を集めている。安・近・短のレジャーが注目されているなかで、「行くなら、博物館がおもしろい!」という声が聞こえてきている。

そこで、博物館に、年間どれくらいの人が集まるのかを調べてみた。
文部科学省が「社会教育調査」で3年に一度の割で、調査を行っており、その結果を見ると、平成19年度(2007年度)の時点で、年間4518万人の人が「博物館」に入館している。3年前の平成16年度と比べ260万人増えており、だんだんと「年間入館者数5000万人」を突破する時代への勢いが出てきている。

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「お勉強」でなく「五感を刺激」。「歴史的な貴重遺産」に出会える魅力も

この博物館の入館者の数字には、「美術館・美術博物館」の入館者は含んでいない。
博物館の統計分類はやや複雑で、文部科学省でいう「博物館」には、「総合博物館、科学博物館、歴史博物館、野外博物館」のほかに「美術館・美術博物館」や「動物園」「植物園」などを含めた施設を指している。
先の年間4518万人の入館者というのは、この全体の数字から、美術館・美術博物館や動植物園などを除いた、一般にイメージする公共的な「博物館」への入館者数を示している。

近年、「博物館がおもしろい」と人気が出てきている背景には、「従来は、“お勉強”というイメージがあったが、いまは、展示物にさわったり、体験できたり、楽しめるところが増えている」、「展示テーマに合わせて、特別に製作され、販売されるフィギアなども魅力」といった声がある。
また、年輩の方からは「セミナーや講演などを聞くのがおもしろい」、「いままでは見られなかった、歴史的な名品が見られるようになってきた」という評価も出ている。

第一生命経済研究所が調査した「博物館の工夫」というレポートでは、入館者を増やすためには博物館が工夫しているポイントでは、「展示内容の充実」、「ホームページ等の充実」のほか、「ミュージアムショップ」や「子どもが集まるイベント」の充実を挙げているところも多かった。

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「固定ファン」層をどれだけ厚くできるか

日本の大規模博物館としては、東京国立博物館、国立科学博物館、九州国立博物館などが挙げられる。それらの入館者数の変化は以下の通り。

      平成20年度  平成21年度  平成22年度
東京国立博物館    217万人    241万人   108万人
国立科学博物館    161万人    177万人   (未集計)
九州国立博物館     76万人    160万人   82万人

平成21年度(2009年度)は、世界の展示会関係者が日本の博物館に注目した、画期的な年だった。
というのも、英国の美術専門誌『アート・ニュースペーパー』が発表した2009年の展示会別入場者ランキングで、東京国立博物館の『阿修羅展』が1日当たり平均1万5960人を記録し、世界トップに。第2位にも奈良国立博物館の『第61回 正倉院展』(1日当たり1万4965人)が入り、パリやニューヨークの博物館を押さえて、上位を占めたからである。

ただ、その一方で、東京国立博物館の入館者数が『阿修羅展』の翌年(22年度)には半減してしまっているように、目玉人気の展示イベントが開催されれば、グンと入館者が伸びていくが、「外れるとガクンと下がる」と、安定感を欠くのが大型博物館の悩みと言えよう。
日本の博物館が、「年間5000万人超え」といった入館者数を安定して記録していくためには、固定ファンの厚みをどれだけ持てるか、といった点が課題として挙げられるだろう。

個性派の専門博物館も人気に

世界の博物館の入館者数上位を見ると、
年間700万人の人が訪れる中国・北京の「故宮博物院」、収蔵品数700万点という規模を誇り、500万人が訪れる英国・ロンドンの「大英博物館」が「2強」を形成している格好。
韓国の「国立中央博物館」、台湾の「台北故宮博物院」や「エジプト考古学博物館」、英国「ヴィクトリア&アルバート博物館」などと、日本の「東京国立博物館」、「国立科学博物館」などが、その後の位置を競っているといった構図になっている。

ただ、博物館の価値は、やはり「他では見られない・体験できない」展示やイベントを展開できるかにある、と言えるだろう。
その点では、日本でも2007年に開館した「鉄道博物館」が年間100万人以上の入館者を記録するなど、注目の博物館(博物館類似施設)も増えてきている。
アンケート調査では「行っておもしろかった博物館」として、大阪の「民族学博物館」、富山の「富山県立山博物館」滋賀の「琵琶湖博物館」、愛知県犬山市の「博物館明治村」、東京の「江戸東京博物館」などもよく名前が上がってくる。
今後も、博物館の入館者数がどのような記録を残していくかに注目しておきたい。

<データ補足>
●日本の「博物館法」で言うところの「博物館」は、「登録博物館」「博物館相当施設」を指す。
「登録博物館」は「地方公共団体」「宗教法人」などが設置した博物館で、都道府県教育委員会による審査・登録を経たもの。
「博物館相当施設」は、独立行政法人などが設置している博物館が含まれ、日本で大規模博物館と言われる「東京国立博物館」「国立科学博物館」「国立西洋美術館」等は独立行政法人が運営しているので「博物館相当施設」と言うことになる。
このほか法的な意味で正式な博物館ではないが、民間企業などが運営している「博物館類似施設」に分類される博物館が、全国に4418カ所ある。この「博物館類似施設」を含めて計算すると、「博物館」の年間入館者数は、1億3640万人(美術館を除く)となる。

〔掲載データ出典元〕

株式会社ミック経済研究所

「データセンター市場と消費電力とグリーンIT化の実態調査・2011年度版」