JAPAN VIEW
輪切りで見る日本の「こんなこと」。その断面図を「絵とき」してみました
「災害時の脚」として注目度アップ、奥さまも、ビジネスマンも…
年50万台突破も射程圏に?
走る! 走る! 「電動アシスト自転車」
モーターの力で走行を補助する「電動アシスト自転車」の売れ行きが、急拡大している。東日本大震災のあと、加速ぶりが目立ってきている。
日本自転車協会のデータによれば、7年ほど前までは20万台程度だった電動アシスト自転車の国内出荷台数は、ここ数年着実に増加し、昨2010年は38万1721台と40万台に接近。
ここ数年の不況ムードにふらつくことなく、「快走に次ぐ快走」が続いていた。
すでにマーケットとしては、ミニ・小型バイク(250CC以下)の販売台数を上回る規模になっている。そこへ、大震災の勃発である。

年間50万台も射程圏に入ってきた!
東日本大震災の後、被災地だけでなく、首都圏でも「ガソリン」が入手難となり、「動く足」として、自転車の注目度が急激にアップし、なかでも電動アシスト自転車の売行きは「ふだんの月の2.8倍〜3.0倍のペース」(自転車販売店)と急上昇したのである。
これまでも電動アシスト自転車は順調に売れ行きを伸ばしていたが、震災後は、「子どもや重い荷物を乗せても安定して走れる」といった主婦層や、「会社へ自転車通勤するので……」といったビジネスマンの需要が大きく増え、販売に拍車がかかった格好なのだ。
この2011年の1〜4月の4ヶ月間だけの国内出荷台数実績を見ても、すでに15万台を突破しており、このペースでいけば年間で45万台突破は確実、一気に年間出荷台数50万台も射程圏に入ってくることになる。
10万円以上もよく売れる!
いまや、電動アシスト自転車が、国内の自転車販売マーケットを牽引しているといっても過言ではない。
というのも、「売る側」にとって、一般の自転車(シティ車・ホーム車)の売れ筋価格帯(販売価格)が1万3000円〜2万7000円であるのに対し、電動アシスト自転車の売れ筋は7万円〜10万円以上、とありがたい商品。
「10万円以上のモノもよく売れる」というのだ。
電動アシスト自転車の、国内の自転車販売市場でのシェアは、台数ベースではまだ9%程度にすぎないが、金額ベースでのシェアは30%に達している(2011年1〜4月)。
女性マーケットの代表商品のひとつに
この電動アシスト自転車がはじめて登場したのは1993年で、ヤマハ発動機が「パル」を発売したのが第1号となる。ただ、当時は話題性が先行したものの、自転車自体の重量が重いこと、電動装置の充電時間が10時間と長い時間がかかるわりに、走行時間が短く、ユーザーの期待に応えられず、売れ行きも伸びていなかった。
それが、2008年末の「道路交通法施行規則」の改正で、アシスト力の規制が緩和(アシスト力補助率が従来の1:1から1:2へ強化)され、以前より坂道の走行などが大幅に楽になったこと、リチウムイオン電池などの進化によって充電時間短縮、走行距離のアップが図られたこと、重量の軽減が図られたことで、主婦層や中高年層にも需要が広がり、販売に勢いがついてきた、というわけである。
最近では、軽量フレームや低床・低重心を採用した「女性向け電動アシスト自転車」が人気になっている。
インターネットなどのアンケート調査でも、次に買いたい自転車として男女とも「電動アシスト自転車」をあげる人が多く、「坂道でもスイスイ」「子どもや重い荷物を載せても軽快に走れる」といった電動アシスト自転車本来のメリットが購買意欲を刺激している。また、「自動車よりも経済的」という節約ムードを反映した需要も増えている。

また、「自転車で風を切って走りたい!」という中高年サイクリストも増え、実用だけでなく、スポーツ快走派の電動アシスト自転車購入(高額商品ニーズの原動力)も目立っている。
ちなみに電動アシスト自転車の企業別シェア(推定)では、パナソニック、ヤマハ発動機、ブリヂストンサイクル、三洋電機、宮田工業…が上位に並んでいる。
〔掲載データ出典元〕