サッカー・ビッグクラブの収入内容を見ていくと、そこにクラブの『戦略』が現れてくる!

収入上位20クラブの顔ぶれには波乱なし!

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1年前にも、当欄で報告しましたが、毎年春先に国際的な監査法人「デロイト(DELOITTE)」が、「世界のサッカークラブの収入ベスト20」を発表していますので、その内容をお伝えします。シーズンは「2011-12」のシーズンということになります。

(詳細はデロイト社のサイトを参照ください。http://www.deloitte.com

 

『サッカークラブの収入上位20(2011-12シーズン)』を見てみましょう。 

 

順位   クラブ名           年間収入額    (円換算・前年比・前年順位)

1位 レアル・マドリード(スペイン)  5.13億ユーロ (590億円・107%・1位)
2位 バルセロナ(スペイン)      4.83億ユーロ (555億円・107%・2位)
3位 マンチェスターU(イングランド) 3.95億ユーロ (454億円・108%・3位)
4位 バイエルンM(ドイツ)      3.68億ユーロ (423億円・115%・4位)

5位 チェルシー(イングランド)       3.22億ユーロ (370億円・129%・6位)

6位 アーセナル(イングランド)    2.90億ユーロ(333億円・115%・5位)

7位 マンチェスターC(イングランド)2.86億ユーロ (329億円・169%・12位)

8位 ACミラン(イタリア)      2.57億ユーロ (296億円・109%・7位)

9位 リヴァプール(イングランド)   2.33億ユーロ (268億円・115%・8位)
10位 ユヴェントス(イタリア)    1.95億ユーロ (225億円・127%・13位)

11位 B・ドルトムント(ドイツ)     1.89億ユーロ (217億円・137%・16位)

12位 インテル(イタリア)      1.86億ユーロ (213億円・▼12%・8位)

13位 トッテナム(イングランド) 1.79億ユーロ (205億円・▼1.1%・11位)
14位 シャルケ04(ドイツ)         1.75億ユーロ (201億円・▼13%・10位)
15位 ナポリ(イタリア)              1.48億ユーロ (170億円・130%・20位)

16位 マルセイユ(フランス)    1.36億ユーロ (156億円・▼9.4%・14位)

17位 リヨン(フランス)       1.32億ユーロ (151億円・100%・17位)

18位 ハンブルガーSV((ドイツ)1.21億ユーロ (139億円・▼5.5%・18位)

19位 ローマ(イタリア)     1.16億ユーロ (133億円・▼19%・15位)

20位 ニューカッスルU. (イングランド)1.15億ユーロ (132億円・117%・ランク外)

※円換算額は1ユーロ=115円で換算しています。

 

この上位20位の顔ぶれを見てみると、ほとんどが常連クラブで、今回、新たに仲間入りしたのは、イングランドのニューカッスル・ユナイテッドだけです。4年前には「2部降格」という苦渋のシーズンがありましたが、その2部で実力の違いを見せて優勝し、1年後にはプレミアリーグへ復帰、2011-12シーズンには、5位という好成績を挙げ、放映権収入が15%増となったのです。

 

20位の中での注目は、イングランド、プレミアリーグのマンチェスター・シティの躍進ぶりです。

総収入は前年比69%増を記録しています。実質的なオーナーはアラブ首長国連邦アブダビの王族であるシェイク・マンスール氏で、その豊富な資金力を背景にアグエロ、テべス、バロテッリ(今季ACミランへ移籍)といった異色の攻撃陣、ナスリ、ヤヤ・トゥーレ、ダビド・シルバといった中盤のタレントを揃え、11-12シーズンは44年ぶりのリーグ制覇を達成しています。そのため、商業収入が2倍に増えたのをはじめ、放映権収入が28%増、入場料収入が16%増を記録したのです。

 

デロイトでは、今回世界21-31位のクラブについても、年間収入額を紹介しています。その10クラブは、

21位 バレンシア(スペイン)       1.11億ユーロ
22位 ベンフィカ(ポルトガル)      1.11億ユーロ
23位 アトレティコ・マドリード(スペイン)1.08億ユーロ
24位 アヤックス(オランダ)       1.41億ユーロ
25位 シュトゥットガルト(ドイツ)    1.32億ユーロ
26位 エヴァートン(イングランド)    0.99億ユーロ
27位 アストン・ヴィラ(イングランド)  0.98億ユーロ
28位 フラム(イングランド)       0.98億ユーロ
29位 サンダーランド(イングランド)   0.96億ユーロ
30位 ガラタサライ(トルコ)       0.95億ユーロ
31位 コリンチャンス(ブラジル)     0.94億ユーロ

 

欧州のクラブは、高額な放映権料や試合ボーナスが支給されるUEFAチャンピンズリーグに出場できるかどうか、好成績を上げられるかどうかが、大きく収入面を左右してきます。その一方では、南米のクラブチームは、ビジネス市場自体が小さいのでなかなか大きな収入を得るのは難しいという面があります。

その意味では、30位に食い込んでいるブラジルのコリンチャンスの奮闘は、注目していいかもしれません。

コリンチャンスは、サンパウロの人気チームで、過去、リベリーノ、ソクラテス、ドゥンガ、リバウドといった名選手を生んでいます。最近の成績では、2011年にリーグ制覇、12年には南米のクラブ選手権である『リベルタドーレス杯』を獲得、その年の年末に日本で行われたFIFAクラブワールドカップでも、チェルシーを破って優勝。こういった成績が、南米クラブで唯一上位30位に入ってきた要因と言えるでしょう。

 

サッカー・ビッグクラブの収入内容の違いを見ていくと、各クラブの戦略が見えてくる

 

では、ちょっと視点を変えて、ビッグクラブの収入の内訳がどうなっているかを見てみましょう。

サッカークラブの収入には、大きく分けて 

(1) 入場料収入(観客入場料、試合ボーナス、勝利ボーナス等)

(2) 放映権収入(テレビ放映権料、画像配信分配金等)

(3) 商業収入 (スポンサー契約料、グッズ販売売上、興行収入等)

の3種類があります。

デロイトは、上位20クラブの収入内容を発表しています。(数字はそれぞれの構成比%を示しています)

 

 サッカー・ビッグクラブ20の収入内容(構成比)
(2011-12シーズン、構成比・% 資料:DELOITTE社)

2011-12シーズンのビッグクラブ収入内容(構成比・%)

2011-12シーズンのビッグクラブ収入内容(構成比・%)

 

こう見ると、最もバランスがとれているのが、マンチェスター・ユナイテッドと言えそうです。3部門でほぼ3分の1ずつ稼ぎ、本拠地・オールドトラッフォードへの動員力、世界的な人気、安定したチーム成績が揃い、経済誌『フォーブス』がスポーツクラブの資産価値でトップに格付けている理由がわかります。こんなチームユニフォームを着ている香川選手は本当にすごいですね。

イングランドのクラブは、収入ランキングに最も多くのクラブを送り込んでいます。20位以内に7クラブ、30位以内に実に11クラブです。ただ、その内容はクラブごとに違いがあるようです。入場料収入で稼ぐアーセナルは、商業収入では弱さを見せます。その対照がマンチェスター・シティで、商業収入の稼ぎがほぼ半分を占めますが、入場料収入ではグンと下がります。トッテナムやニューカッスル・ユナイテッドは放映権収入で稼いでいます。

 

経営の健全性の高いドイツの各クラブ。そのスポンサー獲得の背景は・・・

バイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムント、シャルケ04といったドイツのクラブチームには大きな特徴があります。収入の過半を商業収入で上げているという点です。

ドイツのクラブ経営は、他の国のリーグに比べ健全性が高いと言われています。

「ブンデスリーガ」全体の放映権の収入を各クラブに分配するシステムが機能しており、各クラブはスタジアムなどの設備投資に力を入れ、観客の動員力も高いものがあります。入場料自体は低く設定されているため、入場料収入のボリュームは目立ちませんが、リーグ1試合当たりの統計を取ってみると、世界のトップに君臨するのは、ボルシア・ドルトムントの7万9860人で、この点ではマンチェスター・ユナイテッド、バルセロナ、レアル・マドリードもかないません。観客動員力のトップ10には、ドイツのクラブが4つも入っています。

この観客動員力があるため、ドイツのクラブには安定したスポンサーが付き、高い商業収入のベースが形成されているのです。

しかも、ドイツは国内に、自動車・化学・金融・通信・ビール・医薬品などの大手企業が揃っており、これらが公式スポンサーとなっています。また、ドイツ自体がビジネス市場としても有力なことから、海外企業がスポンサーとして名乗りを上げることも多く、これらが、各クラブの比較的安定した収入源となっているのです。

ちなみに、バイエルン・ミュンヘンにはドイツ・テレコムやアリアンツ(保険)、ボルシア・ドルトムントにはエボニック(化学)や日本のヤンマー(農機)、シュトットガルトにはメルセデス・ベンツ、シャルケ04にはロシアの資源会社ガスブロムやエミレーツ航空などがスポンサーとなっています。

 

ドイツのクラブの健全経営に対し、問題を抱えているのはスペイン・リーガエスパニョーラのクラブかもしれません。

確かにレアル・マドリード、バルセロナの2大クラブはスケールで群を抜いており、世界中にファンがいるため、商業収入も厚く、放映権収入だけでもそれぞれ200億円以上を稼いでおり、そのパワーは群を抜いています。

ところが、スペインの放映権料の分配方式では、他の欧州リーグと違い、各クラブが個別にテレビ局と契約するかたちになっているため、人気は、スター選手が揃い、実力も備えているこの2つのクラブに集中し、他のクラブにはなかなかマネーが集まってきません。

1部リーグであるリーガエスパニョーラの中でも、下位チームには選手の給料の遅配問題が起こったり、クラブの経営危機が表面化したりしているのもそのためです。

レアル・マドリード、バルセロナでも、スター選手揃いでその年俸の負担が大きく、収益という面では「けっして楽ではないはず」という観測もされています。

クラブの収入内容を見ていくと、そのクラブの『戦略』が見えてくるのが面白いところです。高額を投じて有力選手をスカウトし、その人気をベースに商業収入や放映権で稼いでいくのか、比較的年俸の安い地元育ちの若手を育て、観客動員に結び付けていくのか・・・。

 

そんな戦略を推測しながら、サッカー観戦するのも面白いかもしれません。

 

Deloitte Football Money League 2013

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