忘れられた商品が、「節電」でいまや“売れる家電”の主力に

史上初の1000万台突破へ 
扇風機輸入にいま「風が強く吹いている!」

「15%節電!」が叫ばれる中、家電商品の中で扇風機が売れに売れているという。有楽町のビッグカメラでも1階の入り口付近という「主役のポジション」に初めて扇風機たちが登場。

ところが、この扇風機という商品、いったい年間でのくらい売れているのか、市場規模がどのくらいなのか、なかなか数字がつかみにくい。
というのも、すでに「一時代が終わった」という扱いで、公的な統計からは工業品生産額項目や家計消費項目から外されてしまっており、しかも、国内生産は「ほぼゼロ」という、自給率ゼロと言ってもいい商品だからだ。

そこで、扇風機の輸入の動きを追ってみると、今年の「急上昇ぶり」がはっきりしてきている。

財務省貿易統計を見ると、2011年の1〜5月までの扇風機輸入台数は639万台と、前年比53%増を記録している。
これまで、扇風機の輸入でハイペースだったのは、2006年の1〜5月に609万台で走った時だが、今年のペースはこれを30万台上回っている。

2006年の年間輸入台数956万7564台が、扇風機の過去最高記録だが、この2011年は、いよいよ扇風機の歴史上はじめての「輸入1000万台」という大記録が現実味を帯びてきた、と言えるだろう。

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3万円超の高価格でも「節電効果」で売り切れ状態も

国内でも、東芝、三洋、パナソニックといった家電メーカーブランドで売られているものの、国内で出回っている扇風機は「ほぼ100%輸入」が占めており、この輸入の動きが、国内市場の動きを映していると見ることができる。

今年の扇風機市場の特徴のひとつとして、「高価格帯商品」が売れているという点だ。
キッカケとなったのは、“羽のない扇風機”として、昨年のグッドデザイン大賞も受賞したダイソン(本社:英国)社の『エアマルチプライヤー』という商品。
一台3万円から5万円台という高価格でありながら、その独創的なデザイン、幼児のいる家庭での安全性というポイントが効いて、ヒット商品となっている。

ところが、このダイソン社性よりも今年、注目を集めているのは国内で独特な家電商品販売を行っているバルミューダ・デザインの「グリーン・ファン2」という扇風機だ。
3万4800円という高価格にもかかわらず、「注文の受付停止、入荷時期未定」という状態で、「楽天ショップなどで検索しても、ほとんど売り切れ」という様相を呈している。
この売れ行きの大きな要因となっているのが「通常の扇風機に比べ、消費電力が10分の1」(バルミューダ社)という“節電”商品であること。
二重構造の羽根で2種類の風を発生させ、モーターの低回転でも自然に近い風を生み出せるのが特長だという。

また、東芝ホームテクノが発売している「SILENT(サイレント)」という扇風機も、2万円台の価格ながら静音性ときめ細かい風量調節が注目され、売れ筋商品となっているという。

思わぬ“法人需要”の増加が市場を動かした

日本国内で、いま販売されている扇風機は、その96〜98%が中国で生産されているものだ。大手ブランドでは、英国ダイソンがマレーシア製だが、東芝ホームテクノやバルミューダなどほとんど生産拠点は中国だ。

扇風機は、中国でも、通常の年であれば、「生産計画台数に達すれば、その年の生産・出荷は終了する」という商品なのだが、今年の夏場商戦に向けては、家電販売各社とも中国での生産委託台数を2〜3割増で臨んだものの、それでも日本の「特需」に追いつかない状態になっている。

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これまで、扇風機というのは「個人需要の商品」だった。だが今年は、会社でエアコンの温度設定を引き上げる代替として、扇風機を「数十台単位で、まとめ買い」する企業が出たり、個人でも、「事務所のフロアに」、「自分の仕事場の机の上で」という新たなニーズが掘り起こされ、こういった法人需要も市場を動かした要因になった、と言うことができるだろう。

〔掲載データ出典元〕

財務省「貿易統計」(統計品別推移表など)

扇風機=輸入統計品目コード8414.51-010号に属するもの〔輸入→期間指定→コード等→第1数量が台数を表示〕