今日もどこかで見かける長い行列。心理学的には“同調行動”だが・・・

「行列は嫌い」が84%。
でも、なぜ行列に並んでしまうんだろう?

日本人は「よく行列に並ぶ」と言われている。本当にそうだろうか?
周りの人たちに「どんな行列に並んだことがありますか?」と尋ねてみると・・・、

「年末ジャンボの発売開始日に、西銀座のチャンスセンターで3時間並びましたよ」という60歳の男性。
「東京駅地下街のつけ麺屋、六厘舎で40分並んでやっと食べることができたけど、いつも50人くらいは並んでますよ」と20歳のサラリーマン。
「春に、娘の幼稚園入学のために夫婦交代で行列しました。前日の夜から並ぶのは当たり前なんですよ」と30歳の主婦。
「去年10月、iPhone4Sの発売で、銀座のアップルストアで長い列に並びましたよ。800人も並んだって後から知りました」と30歳代のイラストレーター。
「美術館によく行くけど、人気の展覧会では開館の1時間前から並んでます」と50歳の婦人。
50歳の男性は「印象に残っているのは2年前の厚木のB級グルメグランプリ。“焼きそば”に1時間半も並んだ」。「やっぱり、いままででいちばん疲れたのは、大阪の万博だねぇ」という人も。
そのほかにも「AKBの握手会」「プランタンの初売り」に並んだという若者もおり、皆、それぞれ、行列の体験を持っているようだ。
ちなみに、「まったく行列したことがない」というのは一人だけだった。

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ワクワクする行列
Vs.
イライラする行列

年代層、男女の違いでも、並んだことのある行列はそれぞれ異なっているようだ。
インターネットによる200人アンケートでも、若い男性のサラリーマンや学生さんは、「ラーメン屋さんには、昼食時によく並びます」、「iPhoneの新機種発売に」という人が多く、女性はアパレルブランドの新規開店やバーゲンセール。男女を問わず多かったのは「給料日や月末の銀行のATMで」を挙げる人。中高年では「宝くじの列に」という男性陣に対し、女性陣は「ホテルのランチビッフェ」。
年齢が下がってくると「やはりディズニーランド」という声は多く、高校生や大学生では、「ドラクエなどゲームソフトの発売日」「イベント関連」を挙げる人も多かった。
全体で、行列に並んだことのある人は全体88%に達しており、行列に無縁という人は1割程度ということがわかる。

マーケティング会社のトレンダーズの調査では、「行列に並ぶのは好きですか?」という問いに対して、「好き」と答えたのはわずかに16%でしかない。逆に言えば、「行列に並ぶのは好きではない、嫌い」という人が84%を占めているわけだ(調査対象は、女性だけですが)。
行列に並ぶことが「好き・嫌い」ということと、行列に「並ぶか・並ばないか」ということは別物、と考える必要があるようだ。

料金支払いサービス“ペイジー”の普及活動をしている「日本マルチペイメントネットワーク推進協議会」の調査では、“待てない行列・待ちたくない行列”のトップ3は、「コンビニのレジ待ち」、「銀行窓口の列」、「飲食店の行列」という結果が示されている。
「人気のアトラクション待ちや話題の店など、その先に楽しみがあれば“待てる行列になるが、”並ばされる行列“では、多くの人が『時間がもったいない』、『飽きる』、『面倒』、『疲れる』と感じてしまう」と分析している。

また、電通の調査によれば、「どんなときに行列に並んでしまいますか?」という問いかけに対し、
………………………………………………………………
1 おいしいもの、いい物など、並ぶ価値があるとわかっているとき
2 評判を聞いたり、流行ったりしていて、自分も試したいとき
3 限定で、そのときにしか手に入らないとき
4 どうしても食べたい、買いたい、と思っているとき

5 行列をしてみて、試してみたいと思ったとき
………………………………………………………………
といった回答が上位に並んでいる。
こう見てくると、行列に並びたくはないけれど、並ぶ際には、「案外、強い意志を持って並んでいる」、「確信をもって行列にならんでいる」と言うことができるだろう(ただし、これには「並ばざるを得ない、無理矢理の行列」は含まれていない)。

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心理学的には、
行列は“同調行動”

心理学的な分析によれば、行列は『同調行動』のひとつであると言われている。
人には「ほかの人がやっていることと同じことをしたい」という欲望があり、それを端的に表すのが、行列に並んでしまうということらしい。
「何の行列なんだろう?」、「何かいいことがあるのかな」と、ふと足を止めてしまうのは、すでにその同調行動の心理が作用し始めている、というのである。

この同調行動を利用するのが、「行列マーケティング」と呼ばれるもので、ショップの新規開店や飲食店などで“意図的な行列”を作り出し、人を呼び込もうというものである。
お客さんとの対応を丁寧にして時間を掛けたり、レジ対応の人を増やさないで並ばせたりする手法や、ラーメン屋さんの繁盛店は座席数が「少なめ」ということも多い。
また、中にはアルバイトの“サクラ”を雇って、行列を演出する手もあるという。また、「並び屋」を職業としている人もあり、裁判の傍聴券の入手、幼稚園の入園申し込みなど「行列の代行」的によく利用されるだけでなく、サクラとして動員されることもあるという(時給は1時間当たり2000円程度とか)。

ポーランド出身の米国の心理学者ソロモン・アッシュ博士は、同調行動を学問として純粋に測定することを実験し、で面白い結果を導き出している。
それは、視覚テストで、カードに描かれた直線と同じ長さを持つ線を別の3本の直線から探し出すというものだが、被実験者の中にあらかじめ「誤答」をする“サクラ”を数人仕込んでおくと、全体の誤答率が37%になってしまうという結果が出たという。サクラがいないときの誤答率0.7%とは大きな開きが出たというのである。
アッシュ博士は、「人間はそれほど周囲の影響を受けるものではない」ということを立証しようとしてその実験を始めたのだが、結果はその逆になってしまったというわけである。

行列はプラス効果も、
マイナス効果も増幅させる

ただ、行列は「期待感を膨らませる」、「手に入れたものがより価値があるように感じる」というプラス効果がある反面、並んだ結果、おいしくなかった、あまり価値がなかったと感じる場合には、「せっかく並んだのに・・・」「なんだ、評判倒れ、「まずい!」というようなマイナス(不快感や不満)を増幅させることにもつながるという。

また、行列に並んでいる時間をどう過ごさせるか、ということも印象につながる重要なポイントであると言われている。
待ち時間を「ただ退屈なだけ」「なかなか進まない」と感じさせるのではなく、エンターテインメントやイベントで楽しませる、その時間を顧客をもてなす時間に充てる、情報を遂次流す、といった工夫が必要なのである。
ディズニーランドなどでは、行列を直線的でなく、クネクネと曲げた列にして、ショーで盛り上げたり、ユニクロの新規開店やアップルストアなどでは並んでいる人にあんパン・ドーナツ、コーヒーなどを配布するといったことが行われている。

「並んでも食べたい」、「並んでも手に入れたい」と思うか、「並ぶくらいなら要らない」と思うか。あとで「並んだかいがあった!」になるか、「せっかく並んだのに・・・」となるか・・・。
ちなみに「ほかの人にならって」という同調行動は、ヒトだけではなく、鳥や動物にもよく観られることだそうだ。